当コラムではこれまでに、私が「就労支援」に出会った経緯、また、社会復帰に向けての思いを書かせて頂きました。
ここで改めて「就労移行支援」とは何かということをご説明した上で、「就労移行支援」について具体的なイメージをできるように私が現在実施している訓練内容をかいつまんでお伝えしたいと思います。
【就労移行支援とは】
・「就労移行支援」は障害をお持ちの方が利用できる社会保障制度による障害福祉サービスのひとつ。
・サービスの利用期間は原則最長2年
・一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者が一般企業への就職に向けて支援を行う。訓練所のような場所。
・利用には福祉サービス受給者証が必要
(参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html
私は元々このサービスのことを詳しく知った上で提供を受けたわけではありませんでした。私の場合は、ケアマネジャーやリハビリの先生から話を頂き繋がることができました。このサービスに携わる事業所は全国に3,300所以上あり、4万人以上が利用しているサービスではありますが、まだまだ全ての人に身近なサービスとは言い難い部分もありますので、気になる方は是非一度お住まいの自治体の福祉窓口で相談してみてください。
さて、ここからは私が実際に受けている訓練について書いていきたいと思います。
私の病気が発症するまで勤めていた会社では、業務におけるパソコンの使用は必須でありそれまで自分は人並みに使えるものと自負していました。ところが病気を発症して8年もの間ずっと無職、パソコンに触れることはほとんどなく、手近なスマートフォンだけで過ごして来ました。そのためパソコンは「昔触ったことがある」といった程度のものになっており、いざ訓練としてパソコンに触れるのは、強い関心と同時に「本当に使えるのか」と不安を感じるものでした。

【リモート訓練】
当初は事業所に通所することで訓練を受けることを考えましたが、私の状態ではそれが適わず自宅(在宅型有料施設)でのリモートによる在宅訓練となりました。「リモート」が世間に浸透していることは様々なところで見聞きしておりましたが、自分もそこに足を踏み入れることになるとは考えてもおらず、最初はしり込みするものがありました。でも、「リハス」の方々の心地よいサポートの下、無理なく自然に「在宅訓練」を始められたのは今思い返しても少し不思議に感じるところもあり、とても有り難かったと振り返っています。
ちなみに、訓練で使用するパソコンは、「リハス」からの貸与され、インターネットに接続する環境も含めて全て整えてもらったため、極めてスムーズな訓練開始となりました
【訓練内容】
いざパソコンを目の前にして、あまりにも久しぶり過ぎて躊躇する反面早く触りたい衝動に駆られました。何とか昔のように操作しようと思っても、パソコンに触れていなかったブランクがある上に、身体の状態は当時と同じではありません。大きな歯がゆさを感じながらも、パソコンに触れられることに強い関心を抱きました。
こんな状態のなか、私が実施した訓練の一部を紹介します。
・Word文字短文の転記、修正
・マウスを使ったコピー&ペースト
・手書きの用紙の内容のエクセルシートへの転記
等々、どれも言葉では説明出来ないユニークさとボリュームのあるものばかりでした。
少なくとも自分一人では到底思い付くものではなく、これらの「課題」によってどんどんパソコンを操作することに慣れていくのが自分で分かりました。このような訓練を受けられるのは感謝であり、また、「リハス」のノウハウへの 信頼にも繋がりました。
【作業における環境整備】
私は身体上の都合により車イス座位の姿勢の安定と保持に難があります。パソコンを設置している机に向かって座ることそのものに苦痛がありました。
でも、いずれ仕事をするつもりなら、何かしらいい方法を探り当て、これらの環境を整備しなければなりません。こちらについては現在も試行錯誤の途中です。
今回のような「就労訓練」を受けていなければ、パソコンに向かって作業する前提そのものに問題があったことに気付かないままでいたかも知れません。
訓練を受け続ける中で何とか改善を図るべく考え続けるのは、今の私の大きな課題と捉えています。
【「就労支援」はあくまでも手段】
こうしてパソコンにも訓練にも慣れていくうちに考え出したことは、「就労支援」はあくまでも「手段」であるということです。「目的」は就労を果たすことです。
訓練を上手にこなすことが目的ではないのです。
訓練を受ける中で自分なりにある程度技術を習熟出来たと感じることで、その先のことばかり気になるようになりました。就労を目指す上で自分が本当にしたいことは何か、果たして自分にはどの程度のことが出来るのか、今自分はどのくらいの状態にあるのか、等々が気になることになりました。
訓練を受けながら「これは一体何のため」といった迷いを持つこともありました。こういったことは、自分一人で考えても決して答えは見つけられません。その点「リハス」には私一人では分かり得ないノウハウがたくさんあります。
もしこのような思いに陥ったときは、そのままの気持ちを正直に打ち明け、相談してみることも良いと思います。
そうすることで、また違った気持ちで訓練に臨めると思います。
そして、より良い就労を果たすために真摯に就労支援と向き合い、新しい人生を見つけたいと思います。
